第62番札所 天養山　観音院　宝寿寺

寺の歴史
かつては伊予三島水軍の菩提寺として、また、大山祇神社の別当寺として栄えていました。

縁起によると、天平のころ（729-749）聖武天皇（在位724-49）が諸国に一の宮を造営しました。この地にも大国主大神ら三神を祀る、伊予の一の宮神社が建立されます。また、大和の僧・道慈律師（？-744）が勅命をうけて、法楽所としての別当寺を創建しました。この別当寺が当寺のはじめとされます。このとき天皇は『金光明最勝王経』を奉納しました。寺名は「金剛宝寺」、現在地ではなく中山川下流の白坪という地（現在地より約1km北に中山川があり、その北岸あたり）にあったと伝えられます。

弘法大師がこの地方を訪ねたのは大同年間（806-10）のころ。寺に久しく留まり、聖武天皇の妃である光明皇后の姿をかたどった、十一面観世音菩薩像を彫造しました。これを本尊とし、寺名を「宝寿寺」と改めて霊場としたと言います。

また、この頃国司だった越智氏の夫人が難産で苦しみ、大師に祈念を頼みました。弘法大師が本尊に祈願した霊水・玉ノ井（現存しない）で加持したところ、夫人は玉のような男子を無事出産したとのころです。このことから、本尊は安産の観音様としても信仰されたといいます。ただ、中山川のたび重なる洪水の被害により、1145年には堂宇を再建し、山号も「天養山」と改めています。

以後、大山祇神社の別当寺として栄えましたが、1585年に豊臣秀吉の四国征伐のため壊滅しました。再興は1636年のころ。宥伝上人により、当寺のみ現在地付近に移され復興されました。そのため、巡拝者は白坪の神社に札を納めた後、当寺で納経を行うことに。その後1679年洪水を避けるため、藩主の命により神社が当寺の横に移転されました。

明治（1868-1912）初頭の廃仏毀釈では神社と分離され、廃寺となりました。しかし1877年、大石龍遍上人によって神社の南隣に再興、1921年には予讃線鉄道工事にともない、さらに南側の現在地に移転しました。

その他見どころ
 再興の祖（寛永13年（1636）四国遍路の行者、宥伝上人によって現在地に移転、再興された）
 道標（山門を入った左手、蘇鉄の前にあった真念が建てたものは、愛媛県歴史文化博物館に移設保存されている。中務茂兵衛が254度目の遍路をした道標は山門脇にある）