第38番札所 蹉跎山　補陀洛院　金剛福寺

【寺の歴史】
四国の最南端、国立公園の足摺岬を見下ろす丘の中腹にあります。境内は120,000平方メートルを誇る大道場です。弘法大師は岬突端に広がる太平洋に、観世音菩薩の理想の聖地・補陀落の世界を感得しました。この旨をときの嵯峨天皇（在位809〜23）に奏上すると、勅願を受け伽藍を建立します。勅額「補陀洛東門」を受け取り、開創したと伝えられます。822年、大師49歳のころといわれる。

港には濃緑の樹海と白亜の灯台があり、その断崖に波涛が砕けています。その様子は観世音さんの浄土を連想させ、自然の大庭園に圧倒させられます。そこにたどり着く遍路の旅もまた壮絶を極めます。前の三十七番札所から80余kmです。いまは車で約2時間余、歩いたら約30時間、3泊4日はかかります。四国霊場の札所間では最長距離で、まさに「修行の道場」です。

縁起の仔細をみると、弘法大師は伽藍を建立したときに三面千手観世音像を彫造して安置し、「金剛福寺」と名づけました。「金剛」とは、大師が唐から帰朝する際、日本に向けて五鈷杵を投げたとされたものです。別名、金剛杵ともいいます。また、「福」は『観音経』の「福聚海無量」に由来しています。歴代天皇の勅願所となり、武将からも尊崇されました。とくに源氏一門の帰依が厚く、源満仲は多宝塔を建て、その子・頼光は諸堂の修復に寄与しています。

戦国時代（1467-1590）以降、海の彼方にある常世の国・補陀落浄土を信仰して、1人で小舟を漕ぎ出す「補陀落渡海」が盛んだったことや、一条氏、山内藩主の支えにより、寺運は隆盛しました。

大師因縁の「足摺七不思議」といわれる遺跡が、岬の突端をめぐるように点在しています。

【庭園】
仁王門をくぐると嵯峨天皇勅額「補陀洛東門」が迎えてくれます。観音の住む補陀洛界に最も近いとされる門です。境内には大きな池があります。諸堂、土佐五色石が映り、108体の仏群に抱かれる、曼荼羅さながらの水鏡です。

【真念庵】
金剛福寺への遍路道の途中、土佐清水市に残る遍路宿です。真念が江戸時代（1603-1868）に建てました。

【その他見どころ】
・本尊
・三面千手観世音立像
・嵯峨天皇宸筆の勅額（「補陀洛東門」と彫られた木額。嵯峨天皇は弘法大師、橘逸勢とともに平安初期の能筆家「三筆」の1人）

【年中行事】
・足摺おねはんまつり
日時：旧暦2月15日