一国(いっこく)参り

四国4県をひとつずつまわる巡礼旅

八十八ヵ所の霊場を一度に巡ることを「通し打ち」といいますが、一度に回りきらなくてはいけないという決まりはありません。何回かに分けて巡ることを「区切り打ち」と呼び、その中にはひとつの県を一国として巡る「一国参り」と呼ばれる回り方があります。お手軽に始められることでも人気あり。各県の特徴を参考に自分好みの国からスタートしてみませんか。

阿波の国、徳島23カ寺 1番~23番札所

~発心の道場~
「一番さん」と呼ばれ親しまれている1番札所霊山寺(りょうぜんじ)から始まる順打ち遍路の出発点。徳島は「発心の道場」と言われ、物事を思い立ち始めようとすることを意味し、第一歩を踏み出す地としてお遍路さんが集まり賑わいます。

1番から9番札所までは平坦でのどかな景色が続き、比較的歩きやすいコース。初めての歩き遍路にもおすすめです。また、13番から17番札所までは、徳島市内に集中。まずは観光を兼ねて徳島市内の霊場を制覇しながら、お遍路の楽しさを体感してみるのも良いでしょう。

「遍路ころがしの道」といわれる難所にあえて挑戦!?

「遍路ころがしの道」といわれる難所にあえて挑戦!?

いざチャレンジ!厳しい登りの遍路道へ

お遍路さんが転んでしまうほどの厳しい難所という意味で使われる、遍路ころがしの道。四国八十八カ所の中で最も険しい山道といわれているのが、徳島県の11番札所藤井寺から、標高930mの山の中腹に位置する12番札所焼山寺までの約13キロ。まさに修行の霊場というだけありの難所ですが、乗り越えた時の達成感は他では味わえない感動が!この達成感が、次への一歩を踏み出せることを改めて実感し、今後の自信にもつながること間違いありません。

土佐の国、高知16カ寺 24番~39番札所

~修行の道場~
高知県は、室戸岬の先端にたつ24番札所の「最御崎寺(ほつみさきじ)」からスタート。修行の道場といわれるだけあり、札所間の距離が最も長いのが特徴。精神的にも肉体的にも厳しい地と言われていますが、今は車で移動することが多く、室戸岬から足摺岬までの海岸線を走り太平洋の絶景も楽しみながら巡れるドライブ遍路にピッタリのコースです。

弘法大師が悟りを開き、「空海」と改名されたと伝わる洞窟、御厨人窟(みくろど)は、室戸岬から車で10分の場所。高知県を順打ちで回るなら、初めに訪れておきたい弘法大師ゆかりの伝説スポットです。

高知で学業成就を祈願

高知で学業成就を祈願

四国霊場で唯一、文殊菩薩を本尊とする古刹「竹林寺」

「三人寄れば文殊の知恵」ということわざにもあるように、文殊とは知恵の仏様。第31番札所の竹林寺は文殊菩薩を本尊とし、学業成就の仏様として親しまれています。「文殊堂」と呼ばれる本堂は国の重要文化財にも指定され、宝物館に所蔵されている仏様17体も、また国指定の重要文化財。それぞれの仏様のお顔を前に心安らぐひとときを過ごせます。県内で唯一五重塔を有する札所としても知られ、国名勝の竹林寺庭園では四季折々の美しさを堪能できます。風光明媚な五台山の山頂に立ち、高知市内を一望できる竹林寺。ぜひ訪れて欲しい札所のひとつです。

伊予の国、愛媛26カ寺 40番~65番札所

~菩提の道場~
厳しい修行の道場(高知県)を超えたあと、煩悩を断ち悟りを得るといわれる「菩提の道場」愛媛県は、40番札所の「観自在寺(かんじざいじ)」から始まります。ここは1番札所の霊山寺から一番離れていることから、四国霊場の裏関所とよばれています。1番から通し打ちをしてくると、ちょうど折り返しの地となる愛媛県。宇和海から山間部を抜け瀬戸内海に向かうルートで、松山市内に8カ寺、今治市内に6カ寺が集中しています。

旅の疲れを癒すなら松山市内の「道後温泉本館」へ。国の重要文化財にも指定された建物は一見の価値あり。松山市内は観光地としての見どころも多く、霊場巡りと名所巡りを同時に楽しめるエリアです。松山市内はレンタサイクルスポットが充実しているので、上手に活用しながら欲張りな旅をしてみませんか。

讃岐の国、香川23カ寺 66番~88番札所

~涅槃の道場~
「涅槃の道場」とは、苦を吹き消し、悟りの境地に達する地ということを意味します。順打ちで回ると最後の国となる香川県。弘法大師生誕の地として知られる75番札所の「善通寺」や、古戦場壇ノ浦を望める景勝地、屋島に立つ84番札所「屋島寺(やしまじ)」など、お遍路巡りではなくても一度は訪れたい寺がたくさん。そして、88番札所の「大窪寺(おおくぼじ)」は結願の寺。四国遍路を共にした金剛杖が多数奉納されており、感慨深いものを感じます。

八十八カ所の中で最も標高が高い場所に位置する66番札所「雲辺寺(うんぺんじ)」でロープウェイを利用したり、85番札所の「八栗寺(やくりじ)」では、山頂まで向かうケーブルの窓から屋島を望むこともできるなど、観光要素もいっぱいです。

善通寺七ヶ所まいり

善通寺七ヶ所まいり

弘法大師生誕の地、善通寺市を中心に7つのお寺を巡る

善通寺七ヶ所まいりは、香川県の第71番札所「弥谷寺」から第77番札所「道隆寺」までを巡るお遍路旅。古来より、この七ヶ所を一日で回ると霊場88ヶ所全てをお参りしたことと同じ意味があるといわれています。各寺院には「なで仏」の七福神さまが一体ずつお祀りされ、全てのお寺をまわると七つの福運を授かるとされています。巡礼の記念におすすめしたいのが「七ヶ所まいり色紙」。各寺院で参拝しお納経をいただく際に授かる御影を色紙に貼ると完成します。開創1200年を記念して作られたもので、御本尊の御影と七福神の御影の2種類あり。弘法大師の彩色御影は善通寺御影堂のみで授与されるのでお忘れなく。
約16キロを8時間程で回れるルートなので、歩き遍路のお試しコースとしてチャレンジしてみてはいかがでしょう。