弘法大師・空海と、四国八十八カ所

それぞれの思いを胸に巡る旅

弘法大師・空海ゆかりの札所を巡って四国を全周する、全長1400キロメートルの遍路道。参拝の目的は人それぞれ。宗派も問わず巡り方も自由ですが、空海のことをほんの少しだけ学んでいくと旅に対する思いが一段と大きくなるかもしれません。

弘法大師・空海とは

数多く残るお大師さまの逸話
1200年ほど前の平安時代、香川県善通寺市に誕生した空海。真言宗の開祖としても知られ、お遍路では「お大師さん」という愛称で、没後は「弘法大師」という名前を授かり、多くの人に信仰されています。
空海ゆかりの地や逸話を紹介しながら、その軌跡をたどってみましょう。

〈身投げして天女に救われた⁉〉
7才の時、仏門の道に入ることを願い、家の近くの山から身投げをすると天女が表れ、空海を抱き留めました。命を救われ、願いが叶うことを示された空海は、青年になってお堂を建てましました。この山が「捨身ヶ嶽(しゃしんがたけ)」と呼ばれ、第73番札所出釈迦寺(しゅっしゃかじ)の奥の院となっています。

〈今や受験生の人気のスポットに!?〉
空海がすさまじい修行の中で、明星を飲み込むという神秘体験をしたのが室戸岬。「御厨人窟(みくろど)」という洞窟で寝泊りしていました。ここにお参りすると記憶力がアップすると言われ、受験生にも人気の巡礼地です。

〈霊水湧き出る泉を掘った⁉〉
空海は、この地を訪れた際、水不足に苦しむ村人たちのために井戸を掘りました。湧き出る水は霊水で、「長寿をもたらす黄金の井戸」とされ、多くの人が訪れるようになりました。水面を覗いて自分の顔が映ったら、長生きできるという言い伝えも。

〈死ぬことなくこの世に留まる⁉〉
空海は「この世に生を受けていることこそ仏」という考えを持っており、人間の中には皆仏の部分があるという信念を持っていました。その考えを「即身成仏」といい、段階を経て仏の境地に至ると説明しています。

故郷を救った!満濃池の治水事業

故郷を救った!満濃池の治水事業

僧侶としてだけではなく、建築や治水など実利の面でも高い能力を示しました。その中で最も大きな功績といえるのが、讃岐の国にある満濃池です。 この池は国内最大級のため池で、当時からこの地域では農業用水として活用されていました。一方で大雨などにより度々決壊し、甚大な被害も出していました。そこで空海はこの池にアーチ状の堤防を築き、氾濫を防いだのです。

なぜ四国八十八カ所の霊場を巡るのか

お遍路さんを支えてくれる空海の存在
山に籠もり、厳しい修行を行うことで功徳を得るとされる修験道によって開かれていた四国遍路。空海への信仰が盛んになり、この地で修行を重ねた空海によって選ばれた八十八カ所の寺院を巡り、功徳を積むとして始まった四国巡礼。数々の伝説を残した空海の足跡を辿る旅が、今では人それぞれの心に寄りそう旅となって継承されているのです。弘法大師(空海)と共に歩むという意味の「同行二人」の思いを感じ、道中を見守ってくれる存在があるからこそ、辛く険しい道も乗り越えられるのかもしれません。